社会福祉法人とは、高齢者、障害者および児童等支援を必要とする人に対する社会福祉事業を営むべく認可設立される非営利法人です。市場原理では満たされない社会的ニーズを補完する団体として公共性・非営利性を特徴としており、様々な規制や自治体の強い監督の下で運営されます。特養や知的障害者施設、保育所などを運営しています。
近年、社会福祉法人制度をめぐっては内部留保を溜め込みすぎている、経営が不透明であるという批判が多くなされるようになってきました。
それに応える形で、社会福祉法人改革法案が平成28年3月31日に成立、公布されました。この改正法は次のような改革をすすめています。
1.経営組織のガバナンスの強化
2.事業運営の透明性の向上
3.内部留保の明確化と計画的な再投資
4.地域における公益的な取組を実施する責務
5.介護人材確保に向けた取り組みの拡大等
今回の改正でどの社会福祉法人にも大きく影響すると考えられるのが評議員会の必置です。また評議員会はこれまでの諮問機関から議決機関となり、理事会への牽制機能を持たせました。
評議員は理事を超える数が必要です。理事は6名以上ですので、7名以上が必要となります。理事・役員との兼任も認められなくなりました。
なお小規模な法人については法施行から3年は評議員を4名以上とする経過措置が採られています。(なお「小規模な法人」の基準は未定です。)
また、現在評議員会を設置しているか否かにかかわらず、すべての社会福祉法人は平成28年中に新たな評議員を選任しなければなりません。
一定規模以上の社会福祉法人は会計監査人を置き、会計監査を受けなければならなくなりました。「一定規模」の基準も政令で定めることとなっており未定ですが、社会保障審議会福祉部会報告書では収益10億円以上、負債20億円以上のどちらかの基準を満たせば、とされています。
社会福祉法人は計算書類・財産目録・定款等を5年間は主たる事業所に、3年間は従たる事業所に備え置かなければなりません。従前は利害関係者のみが当書類の閲覧ができましたが、改正後はいかなる人も閲覧請求ができるようになりました。
また、定款・貸借対照表・収支計算書についてはインターネットにより公表しなければなりません。
内部留保を溜め込みすぎている、という批判に対して、一定額以上の留保「社会福祉充実残額」がある法人に対して社会福祉充実計画の実施費用に充てるものとしました(平成29年4月~)。社会福祉充実残額は法人の純資産額から「事業を継続するために必要な額」をマイナスして求めます。
「事業を継続するために必要な額」は省令で定めることになっていますが、事業に活用している土地建物、建替や大規模修繕に必要な自己資金、運転資金、基本金・国庫補助等特別積立金が含まれると考えられます。
社会福祉充実残額がある場合には、社会福祉充実計画を作成し、実施する必要があります。その内容も今後省令で定めることになっていますが、地域公益事業などが含まれるようです。計画の策定にあたっては、公認会計士等財務に関する専門的な知識経験を有する者の意見を聞かなければなりません。
改正社会福祉法では、社会福祉事業および公益事業を行うにあたって、無料あるいは低額な料金で福祉サービスを提供することを責務として規定しています。
地域における公益的な取組とは、
① 社会福祉事業または公益事業を行うに当たって提供される福祉サービスであること
② 日常生活または社会生活上の支援を必要とする者に対するものであること
③ 無料または低額な料金で提供されること
の3要件を満たす必要があります。
地域における公益的な取組は、高い公益性を有する社会福祉法人に求められる役割として、地域社会に積極的に貢献してゆくものです。平成28年4月1日より施行されています。