税理士法人アズールでは、法人設立から会計・税務及び法人運営に関して、公益法人のみなさまをサポートします。
一般社団法人、一般財団法人の設立支援
公益認定申請補助
月次顧問業務
決算関連業務
その他法人運営関連業務
特例民法法人は、公益社団法人・公益財団法人(以下「公益認定法人」という)又は一般社団法人・一般財団法人(以下「一般法人」という)のいずれかに移行申請しなければならず、平成25年11月30日をもってこの移行期間が終了しました。
平成20年、民法の一部の廃止といわゆる公益三法(おのおの一般法人法、公益認定法、整備法と通称される)が施行され、実に110年ぶりに公益法人制度が改正されました。同時に公益法人に対する税制も改正されました。
新制度では、ベースとなる法人格(一般法人)を法定の手続きを踏めば自由に設立できる(準則主義)ことになり、それらが公益性に応じて公益認定を受けて「公益社団法人、公益財団法人」(以下、公益認定法人という。)になる、という幅のある設計になりました。
さらに、おのおのの法人格の中でも税制面での区分が設定されることになり、各法人がどのような制度の適用を受けるのか、選択が終了したこととなります。その差異の概要は上記【表1】の通りです。左の旧来の公益法人のあり方に対し、右の制度改革後の法人はバリエーションに富んでいます。これは、その法人が公益を行う法人として認められ、優遇されるのにふさわしい公益性を有しているか、個別に審査を受けるという公益認定制度に対応して、税制面でも同じ扱いを受けるのではなく、法人ごとに税制優遇の程度が決まるためです。
この基準としては、公益認定法人となる基準(公益認定基準18項目)や法人税法上の非営利型法人の基準、租税特別措置法(以下措置法という)40条による譲渡所得税の優遇等についての承認基準があります。公益認定基準では、特に財務3基準といわれる「収支相償」「公益目的事業比率」「遊休財産保有制限」をクリアする、あるいは運営体制は適切か(役員の員数・構成など)経理的基礎は適正か、など多岐に亘る基準が設けられています。
移行後の法人の内訳は公益認定法人44.4%、一般法人55.6% と真っ二つに対応が分かれましたが、寄附優遇税制の対象である特定公益増進法人にも該当し、税法上の収益事業であっても非課税という公益事業に非常に有利な枠組みが用意されているのにもかかわらず、半分以上の移行法人が公益への移行を選択しなかった理由は税制以外に上記の多岐に亘る基準にあると思われます。
公益法人等が普通法人等に移行する場合には、課税所得の範囲に変更が生じ、収益事業課税から全所得課税(非営利型法人以外の法人(普通法人)該当)となりますが、この場合には、公益目的以外に特定の者に分配されないことを前提に非課税とされてきた所得の累積額について構成員に分配することも可能となります。
そこで、このように、非課税とされていた前提が存在しなくなった場合には、その時点で、全所得課税が行われていたとしたならば課税されていたであろう部分について、益金に算入して課税を行うこととされています。
益金に算入すべき金額(累積所得金額)=資産の帳簿価額-負債の帳簿価額-利益積立金額-当初調整公益目的財産残額 |
ところで、公益法人等である法人が普通法人となるとはいっても、法人税法4条、7条において収益事業以外の事業から生じた所得に対しては法人税を課さないと規定してきたわけであり、公益法人制度が変わったからといって、過去の公益法人等の時代の収益事業以外の事業から生じた利益の留保額に対して、法人設立時まで遡って遡及的に所得課税を行うというのは理論的ではなく、立法論としても疑問なしとはしません。
ただし、現行の法制度上、課税が行われることとなっていることは事実であり、実務にあたっては、期せずして巨額の課税を受けることのないように、十分に注意する必要があります。
特例民法法人が普通法人に移行するケース、そして非営利型法人である移行法人(移行の認可を受けて移行の登記をした一般社団・財団法人のうち、公益目的支出計画の実施の完了の確認を受けていない法人)が営利型法人である移行法人(普通法人)となるケースでは、累積所得金額の計算に当たって、移行日における「修正公益目的財産残額」と「資産の帳簿価額から負債帳簿価額等を控除した金額」とのうちいずれか少ない金額(以下「当初調整公益目的財産残額」)を累積所得金額から控除することとされており、累積所得金額から控除しきれない場合には、その控除しきれない金額を累積欠損金額とみなすこととされています(法法64の4③、法令131の5①三・②)。
この「修正公益目的財産残額」は、整備法上の「公益目的財産残額」と公益目的収支差額の収入超過額の合計額に、時価評価資産の評価損の額を加算し、時価評価資産の評価益の額を控除した金額となります(法令131の5①三イ、法規27の16の4①)。
整備法上の「公益目的財産額」は時価に基づく金額であり、退職給付引当金の会計基準変更時差異も差し引く等の計算が認められているため、法人税法上の上記の離席所得金額の計算においてそのまま用いるいことはできません。
上記の計算にあたっては、法人税法上の帳簿価格に修正(元に戻す)処理を行って控除することとなるため、「修正公益目的財産残額」という用語が用いられているわけです。
「当初調整公益目的財産残額」は、会計上認識される資産と負債の差額である整備法上の純資産を基礎として算出されるものの、課税対象となる「累積所得金額」は、税制上認識される資産と負債等の差額として算出されることから(法令131の4①)これに関しても差異が生じることになります。
法人の区分の変更に際しては、これらの点に十分に注意する必要があります。
公益法人会計基準では、たとえば賞与引当金、退職給付引当金、役員退職慰労引当金などは、通常の会計処理において負債として計上します(公益法人会計基準の運用指針12(1))が、法人税法上の負債には該当しません。このため、これら引当金は、「当初調整公益目的財産残額」の計算上は負債としてその減少項目となるが、累積所得金額の計算上は負債に該当せずその減少項目とはならないこととなります。