税務署から「相続についてのお尋ね」が届いたのですがどうしたらよいでしょうか。
突然届く税務署からのお尋ねに、不安になった方からご連絡をいただくことがあります。
親族が亡くなると、市町村役場に死亡届を提出しますが、行政手続きのオンライン化により、全国の死亡届の情報は、法務省経由で毎月国税庁に電子通知されています。
国税庁では、この情報を基に亡くなった人の過去の確定申告書や固定資産課税台帳などを確認し、一定以上の財産があると見込まれる場合に、お尋ねを送るようです。
相続税の申告をする必要がある場合には、相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月目の日までに、相続税の申告書を提出するとともに、納税をしなければなりません。
「相続についてのお尋ね」は、相続開始5カ月経過した頃から送られてきますが、相続税の申告が必要かどうかを相続人に確認してもらうために送っているものですので、お尋ねが来たからといって慌てたり、不安になったりする必要はありません。
ただし財産を確認した結果、相続税の申告が必要な場合で、何も準備をしていないときは、申告期限まで残り数カ月しかないことになりますので、直ちに税理士や税務署に相談するなどの対応が必要です。
さて、お尋ねが送られてきても、既に相続税の申告の準備をしている場合は、このお尋ねに回答する必要はありません。回答する必要があるのは、相続税の申告が不要と判定される場合です。この場合は、同封されている記載例に従ってお尋ねの各欄を記載し、案内文に記載の期限までに回答する必要があります。
お尋ねに誤った記載をしたこと自体での罰則はありませが、申告をしないまま申告期限が過ぎ、後に申告の必要があることが判明した場合は、原則として加算税や延滞税がかかりますし、財産を隠蔽していたと判断されると重加算税等がかかる場合もありますので注意が必要です。
お尋ねの回答をするにあたり、同封された書面に記載して提出する方法の他に、国税庁ホームページの「相続税の申告要否判定コーナー」で作成し印刷した「相続税の申告要否検討表」を提出する方法もあります。こちらでは、必要な事項を順に入力していくだけで作成ができ、相続税がかかるかどうかの判定をすることができるので便利です。
【相続税の申告要否判定コーナー】-申告要否判定コーナートップ
https://www.keisan.nta.go.jp/sozoku/yohihantei/top#bsctrl大切な親族が亡くなってから、相続税の申告期限である10か月が経過するのは思った以上に早いものです。相続税を払う人の割合は年々増加しており、10人に1人は課税される時代となっています。お尋ねが来てから慌てることのないように、自分や家族の財産に関心を持っておく必要がありそうです。
相続税の申告では、被相続人から相続人等に対して行われた加算対象期間内の贈与及び相続時精算課税制度の適用を受ける贈与がある場合には、その財産を相続財産に含めて相続税の計算をする必要があります。
贈与税の申告は、受贈者各人で行うため、他の相続人等がいくら贈与を受けていたのか分からなかったりすることで正しい相続税の申告ができないことがあります。
このような場合に、税務署に対して過去の贈与税申告の内容を照会できる制度「贈与税の開示請求手続き」が定められています。
相続等により財産を取得した人で他の相続人等がいる場合には、相続税の申告書の提出又は更正の請求に必要となるときに限り、次の(1)又は(2)の財産の区分に応じ、それぞれの金額について被相続人の住所地等の税務署に対して開示の請求をすることができます。
なお開示請求は、被相続人に係る相続開始の日の属する年の3月16日以後(贈与税の申告期限後)に行うことになります。
(1) 他の相続人等が被相続人から加算対象期間内(相続開始日が令和8年12月31日以前の場合は、加算対象期間は相続開始前3年以内)の贈与により取得した財産(贈与税の配偶者控除に係る特定贈与財産及び相続時精算課税適用財産を除く)については、暦年課税に係る贈与税の申告書に記載された贈与税の課税価格の合計額(※1)
(2) 他の相続人等が被相続人から贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、相続時精算課税に係る贈与税の申告書に記載された贈与税の課税価格の合計額(※2)
(※1) 相続開始の日が令和9年1月2日以後の場合は、加算対象期間内に取得した財産のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、その財産の贈与時の価額の合計額から100万円を控除した残額となります。
(※2) 令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、相続時精算課税に係る基礎控除後の贈与税の課税価格の合計額となります。
この制度は開示請求をする本人以外の他の相続人等に対する贈与が対象となるため、自身への贈与について確認をするためには、別途「申告書等閲覧サービス」や「個人情報に係る開示請求」を利用する必要があります。
参考:国税庁「贈与税の申告内容の開示請求手続」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/2361.htm
相続税は、各相続人が相続により取得した財産に対して課せられる税金です。相続税の納付義務は原則として、相続により財産を取得した者がそれぞれ負っています。しかしながら、遺産をどのように分割するかについては、相続人に委ねられていることなどを考慮して、相続税の負担の公平や徴収確保を図るため、各相続人間において連帯納付義務が定められています。
連帯納付義務とは、相続人の中に相続税を納付しない人がいる場合、他の相続人がその未納分を代わりに納付する義務のことです。これは、相続人がそれぞれの相続分に応じた相続税を納付する責任を持ちながら、全員が共同で納付責任を持つことを意味します。
連帯納付義務の対象者は、同一の被相続人から財産を相続または遺贈により取得した人が対象です。また、生前贈与を受け、相続時精算課税制度を利用していた人も含まれます。
例えば、相続人がA、B、Cの3人で、相続税の総額が300万円だとします。それぞれの納税額がA100万円、B100万円、C100万円で、Cが納付しなかった場合、AとBはCの未納分100万円を連帯して納付する義務が生じます。
ただし、相続で取得した財産の範囲内で納付義務を負いますので、取得する相続財産以上の相続税を納めることはありません。通常の社会生活を行っており連絡がつく以上、税務署は本来の納税義務者へ取り立てを行います。よほどの事情がない限りは連帯納付義務制度を利用して他の相続人に取り立てが行われることはないでしょう。
しかし、財産を取得したあとに失踪した場合や、納税を済ます前に散財して使い切ってしまった場合などには、他の相続人に連帯納付義務を負わされる可能性が高くなります。
連帯納付義務は、相続税の申告期限から5年間有効です。5年以内であればいつでも税務署から通知がくる可能性があります。
連帯納付義務があるため、相続人同士で事前にしっかりと話し合い、納税計画を立てることが重要です。
税金は、金銭で納付することが原則ですが、相続税については、一定の相続財産で納付する「物納」という制度があります。これは、相続した財産の大部分がすぐに換金できない不動産などであり、納期限まで又は納付すべき日に延納(年賦による分割納付)によっても金銭で納付することが困難な理由がある場合の救済制度です。
相続税を物納するには、物納の許可を受けなければなりません。許可を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
●延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること
●物納申請財産が定められた種類の財産で申請順位によっていること
●『物納申請書』及び『物納手続関係書類』を期限までに提出すること
●物納申請財産が物納に充てることができる財産であること
これらの要件はなかなか厳しいものであり、物納はハードルが高いと考えられていますが、物納制度を利用すると次のようなメリットがあります。
●物納によれば譲渡所得税は非課税となる
●物納財産を国が収納するときの価額は相続税評価額となる
例えば、相続した株式の含み益が大きい場合は、譲渡所得税の負担がない分、物納を選択するメリットがあります。また、相続税評価額>物納時の価額であれば相続税評価額により収納されるため、物納を選択するメリットがあるといえます。
ただし、逆に物納時に株価が上昇していた場合でも、その上昇分は考慮されないため不利となることや、取得費加算の特例を使うことで譲渡所得税は抑えられる事を考慮し、物納と売却して納税のどちらが有利か綿密にシミュレーションする必要があります。
先日、国税庁が公表した「相続税の物納処理状況等」によれば、令和5年度の物納申請件数はわずか23件、許可16件となっています。
物納申請件数は、バブル崩壊後の地価の下落や土地取引の減少の影響を受けて増加し、1万件を超えていた時期もありました。しかし、平成18年度税制改正で、物納の基準が明確化された頃から申請数は1千件を切り、平成29年度以降は100件を割り込み、減少傾向が続いています。相続税の物納処理状況等|国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/jokyo/01.htm
)
一定のメリットがあるものの、厳しい要件と時間のかかる煩雑な手続き等のため、ほとんど利用されなくなっている物納制度ですが、今後の経済状況の変化や、相続する財産によっては物納制度を選択する方が有利になることもありえます。
自分の財産のうち、不動産などすぐに換金できない財産の割合が高い場合は、物納の可能性とメリットを相続開始前から検討しておくと、物納のメリットを享受できるかもしれません。
7月1日に国税庁より令和6年分の路線価が公表されました。路線価の全国平均は前年比で2.3%上昇し、3年連続の上昇となり、2010年以降で最も大きな上昇となりました。好調なインバウンド需要や全国的な再開発などが路線価を押し上げる要因となっているようです。
令和6年分の都道府県庁所在都市の最高路線価では、前年と比較して上昇した都市は37都市(前年29都市)で、上昇率も高い傾向になります。また、下落した都市は1都市(前年4都市)で、全国的に上昇傾向であることがうかがえます。
そもそも路線価とは・・
相続税や贈与税において土地等の価額は、時価により評価することとされています。しかし、相続税等の申告に当たり、土地等について自分で時価を把握することは必ずしも容易ではありません。
そこで、国税庁は、土地の価格が概ね同一と認められる一連の土地が面している路線ごとに評価した1㎡当たりの価額を「路線価」とし、相続税や贈与税の申告のための財産評価を行う際の便宜及び課税の公平を図る観点から、毎年7月に公表しています。
路線価は、毎年1月1日を評価時点として、地価公示価格、売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として算定した価格の80%を目途に評価されます。
各地区の路線価の詳細等は、国税庁のホームページで閲覧することができます。現在のホームページでは、平成30年分から令和6年分までの路線価を確認することができます。
固定資産税評価額との相違点
路線価が、相続税や贈与税の申告の際に利用されるのに対して、固定資産税評価額は、3年毎に1月1日時点の土地の価格を市町村が決定し、地価公示価格の70%位を目途に評価され、固定資産税や都市計画税の評価の他に登録免許税や不動産取得税の算定に利用されています。
なお、令和6年能登半島地震による災害を受けた地域については、路線価に調整率を乗じて計算する措置が設けられています。
令和6年分の路線価等について:国税庁
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/rosenka/index.htm
国税庁路線価の掲載ページ
https://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm
令和6年3月1日から戸籍法の一部を改正する法律が施行され、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書等を請求できるようにする「戸籍証明書等の広域交付制度」がスタートしました。相続などの行政手続や各種申請手続での負担が軽減されることが見込まれます。
相続手続きにおいては、まず戸籍謄本の収集から始まります。被相続人については出生から死亡までの戸籍謄本を取得して、相続人が誰なのかを確定する必要がありますが、被相続人の本籍地に複数回異動があった場合には、複数の市区町村に個別に請求する必要があったため、かなりの時間と労力を要します。
この広域交付制度の利用により本籍地が遠方にある場合でも、自宅や勤務先の最寄りの市区町村の窓口でこれらの証明書を取得することが可能となり、また複数の本籍地がある場合でも、1か所の窓口でまとめて請求することができます。
この制度で請求できる方は、以下のとおりです。
・申請者本人
・配偶者
・直系尊属(父母、祖父母など)
・直系卑属(子、孫など)
(注)兄弟姉妹、代理人による請求はできません。また郵送での請求は認められません。
また対象となる証明書は以下のものとなります。
・戸籍全部事項証明書
・除籍全部事項証明書
・改製原戸籍謄本
・除籍謄本
(注)戸(除)籍個人事項証明書、戸(除)籍一部事項証明書、戸籍の附票(戸籍の附票の除票)の写し、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍などは広域交付の対象外です。
なお法務省からの通達により、全市区町村において、当面の間、本籍地市区町村以外の戸籍証明書の交付については、当面の間、本籍地市区町村への確認が必須となっているようです。このため日曜窓口実施日、他市区町村が閉庁している時間帯は、他市区町村の戸籍証明書の交付ができなかったり、通常の開庁時についても、本籍地への確認やシステム障害等により発行に時間がかかってしまうこともあるため、事前に請求する各市区町村のホームページをご確認ください。
参考:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
参考:名古屋市「本籍地が市外の戸籍証明書等を取得できるようになりました」
https://www.city.nagoya.jp/sportsshimin/page/0000170488.html
相続が発生したとき、相続人としてまず思い浮かべるのは配偶者・子・父母ではないでしょうか。しかし被相続人(亡くなった方)に配偶者や子がおらず、父母もすでに亡くなっている場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となるケースがあります。
法定相続人は被相続人の配偶者と血族で、次のようにそれぞれ相続順位が決められています。なお、配偶者は常に相続人となります。
第一順位:子や孫など直系卑属
第二順位:父母や祖父母など直系尊属
第三順位:兄弟姉妹
兄弟姉妹の相続順位は、第三順位と血族の中では一番低い位置にあります。被相続人に子供がいる場合、その子供が法定相続人として遺産を受け継ぎます。このとき、たとえ被相続人に父母や兄弟姉妹がいたとしても、彼らには相続の権利はありません。また、被相続人に子供がいない場合には、その父母が次に相続人となります。兄弟姉妹が相続人となるのは、亡くなった人に子供も父母もいない場合だけです。
遺言が存在しない場合は、相続は民法が定める法定相続分に従って行われます。兄弟姉妹が法定相続人になる場合、その相続分は相続人の構成や人数によって異なります。
兄弟姉妹が法定相続人になるのは次の場合です。
(1)相続人が配偶者と兄弟姉妹だけの場合
被相続人に配偶者はいるが子はおらず、被相続人の父母・祖父母ともに亡くなっているときは配偶者と兄弟姉妹が法定相続人となります。この場合の法定相続分は次のとおりです。
配偶者 :財産の3/4
兄弟姉妹:財産の1/4
被相続人に配偶者がいる場合には兄弟の法定相続分は財産の1/4となり、1/4の財産をさらに残された兄弟姉妹の人数で分割することになります。残された兄弟姉妹が2人ならば、それぞれ1/8ずつ財産を相続する計算です。
(2)相続人が兄弟姉妹だけの場合
兄弟姉妹のみが相続人になるのは、被相続人に配偶者や子がおらず、被相続人の父母・祖父母がすでに亡くなっている場合です。この場合の法定相続分は、兄弟姉妹の人数で遺産を平等に分けます。
残された兄弟姉妹が2人なら1/2ずつ、3人なら1/3ずつ財産を相続する計算です。
兄弟姉妹が相続人となる場合にご注意いただきたいことは、兄弟姉妹には遺留分が認められていないことです。もし被相続人が遺言で全財産をある人に遺贈しても、兄弟姉妹は遺留分侵害額請求をすることはできません。
兄弟姉妹に遺留分はありませんが、代襲相続はあります。
代襲相続とは、本来相続人となるはずだった子または兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、その者の子が代わりに財産を相続することです。
例えば、被相続人が独身で子もおらず、父母・祖父母ともに亡くなっている場合の相続人は兄弟姉妹です。しかし、兄弟姉妹もすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹の子(甥・姪)が代わりに財産を相続することになります。ただし、代襲相続は、甥や姪1代限りとなりますので、甥や姪の子が再代襲相続することはできません。
贈与税には、暦年贈与と相続時精算課税制度の2種類の課税制度があり、相続時精算課税制度を選択すると暦年贈与には戻れないということは、ご存じの方が多いと思います。
では、同一年に父からの贈与を精算時課税制度、母からの贈与を暦年贈与とすることは可能なのでしょうか?
税務署に一定の書類を提出した場合には、相続時精算課税贈与を選択することができます。相続時精算課税制度を選択した場合には、その選択をした年以後、相続時精算課税制度に係る贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を申告する必要があります。
この相続時精算課税制度は「受贈者(子又は孫)が贈与者(父母又は祖父母)ごとに選択することができる」とされていますので、たとえば、父からの贈与については相続時精算課税制度を選択し、母からの贈与は暦年課税贈与を使うということも可能となっています。
また、もし同じ年に父から相続時精算課税制度で贈与を受け、母から暦年課税贈与を受けていた場合に、暦年課税贈与の対象である母からの贈与額が基礎控除額110万円以下のときは、母からの贈与については申告する必要はないのでしょうか?
これについては税法の規定より、父から贈与を受けた財産について相続時精算課税制度の適用を受けることから、母からの贈与は暦年贈与の基礎控除額以下であっても、暦年課税贈与で取得した財産も含めて申告する必要があるとされています。基礎控除額以下なので税額には影響しないことになりますが、忘れやすい部分になりますので注意が必要です。
なお、暦年課税で複数の人から贈与を受けたときは、暦年課税の場合、贈与税はその年の1月1日から12月31日までの1年間に、贈与により取得した財産の価額の合計額から基礎控除額の110万円を控除した残りの額に対して課税されます。この場合の基礎控除額は、贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人ごとに1年間で110万円となります。
したがって、1年間に複数の人から贈与を受けた場合、その贈与を受けた財産の価額の合計額から控除できる基礎控除額は贈与者の人数に関わらず110万円となります。
国税庁タックスアンサー No.4410 複数の人から贈与をうけたとき(暦年課税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4410.htm
相続登記がされないこと等によって、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加し、周辺の環境悪化や公共工事の阻害など社会問題となっていました。
この問題を解決するため、これまで任意だった相続登記を義務化するよう法律改正が行われており、令和6年4月1日からいよいよ相続登記の義務化が始まります。
今回は、この相続登記の義務化のポイントについて再確認をしていきます。
◆3年以内に登記する必要がある
相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になります。
遺産分割の話し合いで、不動産を取得した場合も、別途、遺産分割から3年以内に登記をする必要があります。
◆罰則がある
正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
◆住所変更にも注意
住所変更をした場合にも不動産登記が義務化され、2年以内に正当な理由なく手続きをしないと5万円以下の過料の対象となります。
◆法改正前に相続した資産も対象
令和6年4月1日より前に相続した不動産も、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります。3年間の猶予措置があり、令和9年3月31日までに登記をする必要があります。
◆相続人申請登記という新たな制度ができた
早期に遺産分割をすることが困難な場合には、新たに作られた「相続人申告登記」という簡便な手続を法務局にとって義務を果たすこともできます。
相続人申告登記は、相続人の1人が単独で申告でき、添付書面も簡略化されています。
この相続人登記については、オンライン申請を認めるなどの省令改正が行われることが新たに決まり、4月1日の制度開始に向け、より登記しやすくなるように整備が進められています。
義務化スタートを目前にして、司法書士会が制度の周知を呼びかけるセミナーなども開催しているようです。不動産を相続した方、既に相続した不動産をお持ちの方は、早めに専門家に相談し、準備をしていく必要がありそうです。
法務省:不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00435.html
この度の令和6年能登半島地震により、被害を受けられた皆様方に心からお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復旧をお祈り申し上げます。
令和6年1月1日に発生した能登半島地震では、特に石川県、富山県で大きな被害が出ており、政府は今回の地震による災害について「特定非常災害」に指定し、国税庁は石川県・富山県を「指定地域」としました。
これまで特定非常災害に指定されたのは、阪神・淡路大震災(1995年)、平成16年新潟県中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、平成28年熊本地震(2016年)、西日本豪雨(2018年)、令和元年台風第19号(2019年)、令和2年7月豪雨(2020年)で、令和6年能登半島地震(2024年)で8例目となります。
今回の地震災害により被害を受けた場合には、相続税及び贈与税に関して次のような税制上の措置が講じられています。
1、特定非常災害に係る特例評価
◆特定非常災害発生日前に取得した財産評価
特定非常災害の発生日前に相続又は贈与により取得した特定土地等又は特定株式等でその特定非常災害発生日において所有していたものについては、その取得時の時価によらず特定非常災害の発生直後の価額により評価することができます。
(注)
特定非常災害・・・著しく異常かつ激甚な非常災害であって、その非常災害の被害者の行政上の権利利益に係る満了日の延長等の措置を講ずること
が特に必要と認められるものが発生した場合に指定
特定土地等・・・特定地域内にある土地等
特定株式等・・・株式等(上場株式等を除く)のうち、その取得時において特定地域内にあった動産等の価額が保有資産の合計額の10分の3以上であ
る法人の株式等
※能登半島地震による災害に係る「特定地域」は、令和6年2月2日現在、石川県・富山県全域及び新潟県新潟市です。
◆特定非常災害発生日以後に取得した財産評価
相続又は贈与により特定非常災害発生日以後同日の属する年の12月31日までの間に取得した特定土地等、特定非常災害発生日以後同日を含む特定株式等の発行法人の事業年度末日までの間に取得した特定株式等の価額は、特定非常災害の発生直後の価額に準じて評価することができます。
なお令和6年中に相続又は贈与により取得した被災した家屋の価額は、その取得した家屋について被災後の現況に応じた固定資産税評価額が付されている場合には、令和6年度の固定資産税評価額に基づいて評価します。
2、災害減免法による減免
相続又は贈与により取得した財産について災害により被害を受けた場合で次のイ又はロのいずれかに該当するときは、相続税又は贈与税が減免されます。
イ、相続税又は贈与税の課税価格の計算の基礎となった財産の価額のうちに、被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上であること
ロ、相続税又は贈与税の課税価格の計算の基礎となった動産等の価額のうちに、動産等について被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上であること
◆申告期限前に災害により被害を受けた場合
相続又は贈与により取得した財産の価額から、被害を受けた部分の価額を控除して課税価格を計算することになります。
◆申告期限後に災害により被害を受けた場合
災害のあった日以後に納付すべき相続税又は贈与税で、その課税価格の計算の基礎となった財産の価額のうち、被害を受けた部分の価額に対応する相続税又は贈与税が免除されることになります。
3、相続税及び贈与税に係る申告・納付期限の延長
◆指定地域内に納税地を有する場合
指定地域内に納税地を有する場合には、令和6年1月1日以降に到来する申告・納付期限が、別途国税庁告示により定める日まで自動的に延長されます。
なお相続税は令和5年2月28日以降に相続等により財産を取得した場合、贈与税は令和5年1月1日以降に贈与により財産を取得した場合が対象となります。
◆指定地域以外に納税地を有する場合
指定地域以外に納税地を有する場合であっても、令和6年能登半島地震により被災された方については、所轄税務署長に対して「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出してその承認を受けることにより、その理由のやんだ日から2か月以内の範囲で申告・納付期限の延長を受けることができます。
◆特定土地等又は特定株式等を相続又は贈与により取得した場合
特定非常災害発生日前に相続又は贈与により取得し、災害発生日に所有していた特定土地等又は特定株式等について上記1の特例評価の適用を受けることができる場合の相続税又は贈与税の申告・納付期限は、次のとおりとなります。
なお相続税については、相続人等のうちに、特定非常災害に係る特例評価の適用を受けることができる場合には、その相続人等の全員の申告期限が次の期限まで延長されます。
・相続税:令和5年2月28日から12月31日に財産取得→令和6年11月1日
・贈与税:令和5年1月1日から12月31日に財産取得→令和6年11月1日
詳しくは国税庁ホームページをご覧ください。
「令和6年能登半島地震により被災された納税者の相続税及び贈与税に係る申告・納付等の期限の延長について」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/r6/noto/pdf/0023001-073_01.pdf
「令和6年能登半島地震により被害を受けられた方へ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/r6/noto/pdf/0023001-073_04.pdf
「相続税又は贈与税の災害減免措置について(令和6年能登半島地震用)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/r6/noto/pdf/0023001-073_02.pdf
#113 能登半島地震により被害を受けた場合の相続税等の税制上の措置 |
#66 子供のいない夫婦の相続 |
#48 相続人に非居住者がいる場合の申告手続 |
#27 相続税等の納税義務者の見直しについて |
#11 相続税の納税義務者 |
#4 法定相続人と法定相続分 |
#1 相続人の範囲と順位 |
#100 相続財産をふるさと納税した場合 |
#91 遺産を寄付した場合の課税関係 |
#74 国等に対して相続財産を寄附した場合の相続税の非課税 |
#39 平成30年度税制改正~一般社団法人を使った相続税の課税逃れ 対策強化へ |
#31 遺言により相続財産を寄附した場合の相続税の課税関係 |
#8 相続税がかからない財産とは |
#101 相続土地国庫帰属制度について |
#65 国外財産調書の提出状況について |
#54 財産債務調書 |
#29 相続した財産を譲渡した場合 |
#5 相続が発生した場合の被相続人に係る確定申告(準確定申告)について |